貼り箱にとって、現実に合理性のあるパッケージデザインとは?
公開日:2018年11月19日(月)|デザイン
合理性のあるパッケージデザインが、現実の貼り箱を生み出す
レコードを聴く人にとって正に日本の「標準器」といえるカートリッジ(針を通して音を電気信号に変える部分)があります。デンオン(現デノン)の「DL-103」です。これはFMステレオ放送の開始にあたり、1964年にNHK技術研究所(以下、技研)との共同開発で誕生した業務用のカートリッジでした。そして1970年からは民生用にも販売されるようになり、50年以上も基本的な性能や仕様を殆ど変えずに作り続けられています。
元々「放送局」用として誕生したという経緯から、一般の民生用機器のように何か特徴的な特性を持ったカートリッジではありません。あくまでもレコードに刻まれている原音を、いかに忠実に再生するかを目指して開発されました。
しかし、カートリッジを開発したのはデンオンであり、技研は仕様を決めただけです。そういうと技研が「口だけ出した」という印象ですが、この「仕様を決める」ことはそんなに簡単ではありません。もちろん「とにかく高性能なカートリッジを作れ」というのは容易いですが、実現出来ない理想だけを要求しても、費用的に無謀だったり、実際に作れなければ意味がありません。これは当時、技研だからこそ出来たと言われています。
どういうことかというと、当時の技研には今や伝説的な技術者が多数在籍しておられ、彼らが要求したのは「現実に合理性のある設計」でした。これらは中の回路などをちゃんと検討した上で、「簡単にはつくれないが作れなくはない」という現実的な合理性のある仕様だったのです。
こういうことは当たり前のように思えるかもしれませんがパッケージ、特に貼り箱に関してはこんな「理にかなった要望」は実は多くはありません。まさに「絵に描いた餅」のようなパッケージデザインの貼り箱製作依頼が来たりします。それらはデザイナーの方から来ることが多いのですが(もちろん、現実的な案件も多くあります)、パソコン上のCGで描いた貼り箱だったり、ご自分でサンプルを作られる方もおられますが完全な工作だったりするケースです。
実際に量産するとなると、1個を丁寧に時間をかけて作る訳ではありません。我々のような手加工で例えば数百個程度を作るとしても、生産ラインに流してできるだけ効率よく精密に、そして生産の時間と費用を抑えながら作らねばなりません。お客様が貼り箱にいくらでも払っていただけるならいいですが、あくまでも工業製品なのでコストは抑えながら、ちゃんとしたいい貼り箱を量産する必要があります。
貼り箱のデザインの難しいところは、トムソン箱(組み箱)と違い立体物として作っていくため、ちょっとした細かい部分でも、構造的にとても難しくなったりします。
デザイナーの方は、実際の貼り箱の作り方や構造設計は知らない、わからない方が殆どで、我々からすると「絵に描いた餅」的なデザインをされることが多いです。
この「DL-103」のように豊富な知識と製作現場のことも知りつつ、それらを踏まえた上で現実に合理性のあるパッケージデザインに落とし込むと、きっと素晴らしい貼り箱を現実に生み出します。
これはある意味とても理想ではありますが、それが難しいなら貼り箱のデザインについては是非つくり手の我々にご相談いただきたいです。
どんなデザインにすればコンセプトを表現することができるのか、素材は何を使えば不具合が出にくく、質感を活かせるのか?
デザイナーと作り手が一緒に考えていければ、必ず理想の貼り箱に近づくことでしょう。
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