パッケージにとって、クリエイティブディレクションとは?
公開日:2019年04月29日(月)|デザイン
今年3月にメビック扇町主催のセミナー、「田中有史のクリエイティブディレクション講座」を受講させていただきました。講師はクリエイティブディレクターであり、コピーライターでもある田中有史さん。
普通に考えると貼り箱屋が受講するようなセミナーではありませんが、貼り箱もお客様からのご依頼で製作する前に、どんな箱にデザインするのかはある意味「クリエイティブディレクション」とも言えます。
そこで今回のセミナーのことを私自身の備忘録でもあり、要点をまとめて記しておきたいと思います。
第1回 課題をどう捉えるか?
<クリエイティブディレクションって、なんだろう?>
「課題をどう捉えるか?」が、「その課題はどういう方法なら解決できるのか」という答えと密接に関わります。クリエイティブディレクションとは、「課題の本質を捉え、課題を解決するアイデアとアウトプットの方法を考え、最適なものを選択し実行していくことである」と定義できると思います。
<ミッションには必ず本質がある>
ある国の王様が「余は傘が欲しい」と言ったとき、家来であるあなたはどうしますか。素敵な傘を用意する? 王様は、ホントに傘が欲しいのでしょうか。王様は「傘」を欲しいのではなく雨に濡れたくないだけなら、「雨が止むまで待つ」のもいいかもしれません。
目の前に提示されたことだけでなく、その中にある本質を見いだす必要があります。直接的なことだけでなく、もっといい方法があるかもしれません。
与えられたミッションそのままで考えるよりも課題の本質を見つけること、ミッションを再定義し直すことが大切です。
次にどんなコミュニケーションを展開していくか。その切り口(アプローチ/考え方/方針)というのが「コンセプト」です。
<コンセプトって、何だろ?>
コンセプトは、その商品だけが持つオリジナルな魅力。
商品(ブランド/企業)の本質的な価値。
(余談)広告とは、競合商品と差別化(同じベクトル上の優劣)ではなく差異化(違うベクトルでの違い)すること。
<コンセプトの役割と機能>
コンセプトはスタート地点であり、仮説のゴール。そして、途中のチェックポイント。
全体を貫くものであり、全体を支配するもの。
コンセプトは表現を解き放つものでありたい。しかし、それがあるからこそ常にそこに立ち戻ることが出来る。
すべてのアイデアは、常識に捕われない。
大切なのは、オリジナリティ。
わたしは、あなたとは違う。
<コンタクトポイント(商品パッケージ)をメディア化する>
コンタクトポイントは、ブランドに影響を与えているか?
印象を与えているか?
第2回 アイデアをいかにして導くか?
<アイデア発想>
自由なほど、やりにくいものはない。
アイデアが向う方向、アイデアの縛りを自分で設定する。
それがミッションの再定義、コンセプトワークということ、
<ど真ん中が見えると、振れ幅が決まる>
本質=ど真ん中で考えて、それが面白ければ(興味を引くといういう意味での)それが一番強い。
奇をてらうのではなく、コンセプトを忠実に表現する。触れ幅を超えると、本質を逸脱してしまう。
<アイデアをどう導くか?>
降りてくるまで待つ。ただし、頭の中に予見事項を詰め込んでおく。
発想を広げるためには、言葉で考える。イメージ(絵)では考えない。
発想を膨らませるのは、言葉の連想ゲーム。
<アイデアの発想法>
アメリカの住宅会社のDM。ハガキや封書なら普通。「あなたもオーナーになりませんか」と文字が掘られた本物のレンガがDMに。
・写真のない会社案内。
他社と違う(差異化)。
・封筒ではなく、箱で渡す!!
カタログ、会社案内用貼り箱(ケース、紙箱)
https://www.hakoya.biz/item/document/item_878.html
<クリエイティブって、なんだろう?>
糸井重里さんの受け売りですが、「クリエイティブとは、オリジナルな小さな工夫である」と。そして、「それを続けること」であると。
差異化の積み重ねがやがて競合に対する差異化力になり、競合とあきらかに違う識別力を持つことになる。
<アイデア発想の課題>
どこに、目を付けるか。目の付けどころ。
賢いフリをしない。知ったかぶりをしない。
広告は、どこまでいっても鮮度。アイデアも同じ。
アホなこと、変なこと、人がやらないこと、は強い。
<アイデアは、点ではない>
アイデアにとって大切なのは、汎用性と展開力。
その理由はいまや「メディアミックス」から「コンタクトポイントを設計する」時代。
ブランド力やブランドイメージが、人の行動を左右する。
第3回 どのようにアウトプットするか?
<どのようにアウトプットするか(1)>
そう来るか!
ヤラレター。
なるほど。
記憶に残るということは、印象にのこるということ。
<どのようにアウトプットするか(2)>
すべての広告は、ブランド広告である。広告の連続が、そのブランドの人格を形成していく。
アイデアは点ではない。イメージは積み上げていくもの。それしか方法はない。
<どのようにアウトプットするか(3)>
結果として、ブランディングになっていく。
目的は、競合との差異化である。
<どのようにアウトプットするか(4)>
メディアから、コンタクトポイントへ。
コンタクトポイント(顧客との接点)を意識的につくる。ブランドイメージ。
それは、商品、販促物、パッケージ、デザイン、接客、ブログ、SNSなど。
すべてのコンタクトポイントは、メディア(情報を伝達する媒体)になり得る。
<どのようにアウトプットするか(5)>
すべては、キャンペーンで考える。
コンタクトポイントの設計と創造は、現代におけるキャンペーン。
古典を学ぼう。日本の70年代の広告。真似るのは考え方であって、アイデアではない。
<アイデアのアウトプットで目指すこと>
同一カテゴリーの中で特別な存在(唯一無二)になること。
それが、ブランドになるということ。
差異化力はあるか?識別力を持つか?
わたしは、あなたと違います。
事の本質をつかむ能力
言語化する能力
アイデア化する能力
クリエイティブディレクターは常にこれらを考えておかねばならないし、ブランドイメージに果たすコミュニケーションの役割を見据えていなければならない。
「伝えるから伝わる」へ。
「人を動かす」へ。
動かすのはココロです。
学ばせていただいたことを実行するのは簡単ではありませんが、このことを自分自身に意識することはとても重要です。
そして顧客との接点(コンタクトポイント)である商品パッケージ、弊社が企画/パッケージデザイン/製作する貼り箱は重要なメディアであり、ブランドメッセージです。
お客様がパッケージを探して、なぜ村上紙器工業所に来られたのか?
貼り箱に、何を求めておられるのか?
その本質は、いったい何のか?
パッケージにとって「クリエイティブディレクションとは何か?」を考えて、貼り箱をつくっていこうと思います。
ありがとうございました。
田中有史のクリエイティブディレクション講座
https://www.mebic.com/event/7222.html
第1回 2019年3月 6日「課題をどう捉えるか?」
第2回 2019年3月13日「アイデアをいかにして導くか?」
第3回 2019年3月20日「どのようにアウトプットするか?」
田中有史(たなかゆうじ)氏
クリエイティブディレクター / コピーライター
株式会社田中有史オフイス
https://sites.google.com/view/tabisurutanaka
https://www.mebic.com/creators-file/3463.html
同志社大学法学部法律学科卒業
広告代理店、制作プロダクション勤務の後独立する。
神戸親和女子大学客員教授・「広告論」非常勤講師
宣伝会議「コピーライター養成講座」講師
その他講師歴多数
大阪コピーライターズ・クラブ顧問
広告賞の受賞・年鑑などへの掲載多数
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