パッケージ(貼り箱)には、ブランドストーリーを。
公開日:2018年08月27日(月)|貼り箱
モノには、その背景(ストーリー)がある
いよいよ、「大阪パッケージアカデミー」も大詰めとなってきました。実は前回(第1期)は、私も受講生さんたちに混じって「卒業作品」制作をしました。
一見シンプルですが、普段の仕事ではつくれない磁石埋め込み型の貼り箱です…。
先日の授業では、「作品自体も大事だけど、そこに至るまでのストーリー(物語)がとても大切。」という話がありました。
ストーリーがちゃんと出来ていると、貼り箱の仕様(色、質感など)も考えやすくなります。
これはお客様からのご要望で、貼り箱の仕様を決めていく時も同じです。
どんなお客様(ターゲットでありエンドユーザー)に、何(商品)をどのように(どんなパッケージで)届けるのか?
それをストーリー(物語)として、想定しておくことが大切ですね。
パッケージデザインになるまでのストーリーがとても大切
大阪パッケージアカデミー(第1期卒業作品展、出展作品)
(私も、特別参加。2017年3月。)
<作品タイトル>
透明感と艶のあるアナログな音に共感する女性たちへの真空管ギフト
<中 身>
真空管(三極出力管:2A3)
<コンセプト>
今のデジタルな世の中に反抗し、昔ながらのアナログなものをこよなく愛する人、特に撮っても確認出来ない、フィルム代、現像代、プリント代とお金もかかるが、銀塩フィルム、そしてピント合わせから露出まですべて自分の感覚で合わせないと撮影できない機械式カメラ。
そして何より、今や音楽はDLの時代に、CDでもなくアナログレコードの音の質感、音色を愛して、トランジスタなどの半導体ではなく真空管アンプの音を「耳のごちそう」にして、ジャズやクラシックを聴くアナログ好きなオッサンたち。
しかしこの時代において昭和のアナログ好きなオッサンたちに共感し、あえてこの面倒くさくもレトロな“新鮮さ”を感じた女性たち(20代後半〜30代)がアナログの良さを受け止め始めた。
彼女らがひとりBARのカウンターで、シングルモルトを傾けながら聴くJAZZ。
どうせならダウンロードしたデータではなく、analogレコードを“球”で鳴らしてみたい。
そんな彼女たちへの“真空管”ギフト。
元々オッサンだけが楽しんでいたオトナの世界を、この繊細で艶っぽい音色を醸し出す「2A3」で覗いてみては…。
アナログ好きオッサン、伊集院 岳さん。
町工場の経営者、52歳。家族は奥様42歳(会社の経理担当)、長男25歳、長女15歳。
町工場のやりくりを頑張りながら、趣味にも没頭して奥さんによく怒らこられているアラフィフ男性。
若い頃は登山(単独)をしていて、かなり危ない目にも合って、その後ひとり旅にはまり、全国を旅していた。最初の奥さんとは旅先で知り合い(長崎県五島列島福江島)、半年間の遠距離恋愛の末電撃結婚。長男が生まれるも、長男が5歳の時に離婚。今の奥さんとは社交ダンスのパーティーで出会い、3ヶ月後に再婚(彼女もバツイチ)。今は工場の経理をしている。
伊集院さんは音楽とカメラ、そしてウイスキーをこよなく愛するオッサン。
夜な夜な近所のBARのカウンターで、シングルモルトを傾けている。ボトルは、アイラのアードベック10年しか飲まない。
カメラは、ハッセルブラッド(中判)を愛用。そして音は真空管アンプに拘り、特に直熱3極管の古典的ではありながら、素直で繊細、艶のある音を出す「真空管の女王」と呼ばれる「2A3」に惚れ込んでいる。
2A3は米国RCAが1930年代に開発、60年代まで製造された。
現在は、ロシア、中国、スロバキアが製造。音の特徴は、繊細さと音にのる艶っぽさ。特に「弦」の再生には定評がある。伊集院さんが一番好ききなのは、イ・ムジチ合奏団のヴィヴァルディー「四季」(1982年録音 コンサートマスター:ピーナカルミレッリ)、<冬>の第一楽章の途中から入るヴァイオリンのソロ。これには、しびれます。まさに、2A3が奏でる弦の艶です…。
伊集院さんがよく行く近所のオーセンティックBAR、近ごろは若い女性がひとりでシングルモルトを傾けている姿をよくみかける。
声をかけてみると、最近は仕事でもプライベートでもデジタル一色の生活にちょっと疲れ気味。
そんなとき、会社の上司に教えてもらったBARで飲むシングルモルト、ジャズ。
そしてダウンロードして聴く音とはひと味違うアナログなサウンド。
聞くとDLどころかCDでもなく、レコードを真空管アンプで鳴らしているとか。
真空管?
そんなもの、見たこともない。
お店でみせてもらうと、ガラスのチューブの中に金属のパーツや配線が詰まってる。
初めてみたのに、どこか懐かしさを感じるのは何故?
自分の部屋でも、こんな音楽を聴いてみたいな。
そうだ、真空管欲しい〜!!
そんな彼女たちがいくお洒落な雑貨屋さん、オーセンティックBARで買えるオトナな真空管ギフトのパッケージ。
<パッケージイメージ>
イノセント・・・透明感があり、デリケートで純粋、繊細な感じ。
貼箱のインロー式。中ゲスは白のサテン張りで、そこに真空管を納めます。
紙は、ミ・フタはビオトープGA(ベリーレッド)、表紙は五感紙(黒)とファーストビンテージ(オリーブ)を使いました。
箔押しは、音の艶っぽさを表現するために、プラチナ金と黒艶を使いました。
さてロゴですが、マークは真空管の図面記号からつくりました。
あと型番(製品名)である「2A3」のフォントは、「DIN」というのにしました。
浪本さんからアドバイスいただき、「その年代に使われていたフォント」ということで、2A3が生まれた1930年代にドイツで考案されたフォントです。
元々は工業製品の型番などに表記するためのフォントを標準化するために作られた書体で、「ドイツ工業規格(=Deutsches Institut für Normung)」の略称です。
そのため、ドイツでは身の回りの多くのものに使われている書体で、わかりやすいものだと高速道路の行き先表示の看板や、マンホールのふたなど、多くに使われているようです。
DINの書体は、微妙なニュアンスの曲線を省いた機械的フォルムが特徴で、悪く言えば味も素っ気もありません。ただ、無個性がゆえにどんな場面に使える書体だと言うこともでき、HELVETICAのようなクールなサンセリフ体とは異なるスタンダードな書体として、1990年代頃からデザイナーたちを中心に注目を集めるようになりました。
フォントメーカーによっていろいろなバリエーションがあるようですが、さがすと「DIN 1451」というフリーライセンスのものがあったので、それを使いました。
最近の事例では、ユニクロのロゴを佐藤可士和がDINをベースにつくったようです。
ロゴのマークとタイプについても、浪本さんから細かい部分はご指導いただきました。
素材ですが、表紙には五感紙(黒)とファーストヴィンテージ(オリーブ)、ミとフタにビオトープ(ベリーレッド)の組み合わせ。
色的にはコントラストをつけることで、艶っぽい感じを出しました。
<ファーストヴィンテージ>
「ヴィンテージ」はワインの元となる葡萄の収穫年 を表す言葉から転じて「年代物」や「古着」の意で使われる。 通称“ファーヴィン”。
ストーンウォッシュのジーンズのような素朴な風合い で、クラフトベースでレトロな雰囲気で昔の真空管に合うように思いました。
http://www.takeo.co.jp/finder/sear
写真:(背景:ファーストヴィンテージ(イエロー))
フォトディレクション:浪本浩一(株式会社ランデザイン)
撮影:竹内 進(株式会社シャープフォーカス)
村上誠(村上紙器工業所)
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貼り箱ディレクターである村上誠(村上紙器工業所 代表)と親交のあるクリエイティブに関わる方が、パッケージやデザインに関するアイデア、視点、果てはお互いの考え方や生き方について語らいます。