コミュニケーションって、なんでしょう。ブランディングやコンセプトなどと同じで、わかっているようでも意外とわかっていない(説明しにくい)言葉のひとつかもしれませんね。このシリーズではコミュニケーションについて、コピーライターの経験と視点からわかりやすく解説します。


ひとと会ったり、ひとと話したりすることをコミュニケーションとか、コミュニケーションするとかと、言っているケースをよく見かけます。でも、コミュニケーションって本当にそういうことでしょうか。広告、hp、SNSなど不特定多数をターゲットにする情報発信の場合、コミュニケーションの定義をしっかりと認識しておくことはとても大切です。
では、コミュニケーションとはどういうことかを考えてみましょう。この回では、「インフォメーションとコミュニケーションの対比」から「情報発信におけるコミュニケーションの定義」の説明を試みてみます。

インフォメーションはひと言でいうとお知らせです。「◯月◯日 ◯◯◯で◯◯◯◯を行います」のようなお知らせが典型的なインフォメーションです。そこには興味を引くような言葉はありません。事実が単に伝わることだけを目的とした“一方通行(ワンウェイ)”の発信です。ここでは “気になるね!” “面白いね!”というような反応が返ってくることで生まれる情報の送り手と受け手の間のこころの響き合いはありません。だから、インフォメーションばかりをやっていても、ファンづくりは進みません。送り手の世界観やイメージを醸成することもできません。
対してコミュニケーションは“双方向(ツーウェイ)”の発信を指します。“双方向(ツーウェイ)”とは、言いっぱなしの“一方通行(ワンウェイ)”ではなく、送り手から情報が出ていって受け手からの反応が返ってくること。だから、双方向=ツーウェイということす。その結果、送り手と受けての間に感情的な関係(好きになる、気になるなど)ができていきます。逆に、こころの通い合いを生む発信こそコミュニケーションだと言うことができます。

つまり、送り手と受け手の間にこころの響き合いがあってはじめて、コミュニケーションが成立しているということです。ただのお知らせをコミュニケーションとは言いません。送り手と受け手の間に心が響き合う関係ができることに、インフォメーションとの決定的な違いがあります。「こころが響き合う」とは「こころを動かす」と言い換えても良いでしょう。
コミュニケーションの定義がお分かりいただけましたでしょうか。

こころを動かすためにはまず、「こころを動かすぞー!」という意思が必要です。情報の発信には必ず意思が伴うものです。意思は目的と言ってもいいでしょう。何かの意思を持たずに知らせたい事実だけを並べても、だれも振り向いてはくれません。コミュニケーションしようにも相手が振り向いてくれないとはじまりません。
情報を目にしてはじめてコミュニケーションがはじまります。ひとを振り向かせることのできていない情報発信はただの独り言。振り向かせることができない情報の発信は、なにも機能していないと考えましょう。機能していないということはお金と時間の無駄遣いをしているわけです。せっかく情報発信をするならインフォメーションではなくコミュニケーションしないといけませんね。

最近、よく耳にする言葉に「ターゲティング」「ペルソナ」があります。平たくいうと、「ターゲティング」はだれをターゲットにするかということ。「ペルソナ」はそのターゲットの細かな人物設定のことと考えてください。ターゲット像を明快にしようと年収や乗っているクルマの種類、好きなファッションまで設定しても、それはどこまで行っても仮説に過ぎません。
はたして、そのとおりのひとがいるのかどうか、わかりません。仮説とピッタリのひとに情報が届いているのかも、確証がありません。細かくやればやるほど、本来の目的が見えなくなって混乱しませんか?
仮説のとおりのひとがいったい何人、実在するのでしょう?情報はより多くのひとに届かないとコミュニケーション効率があがりません。ターゲットとペルソナを細かく設定すればするほど、どんな情報をどのように発信すれば正解なのかも見えなくなっていくでしょ?それよりもシンプルに、こう考えてください。

コミュニケーションでいちばん大切なのは、ひとを振り向かせることと、そして興味を持たせることです。そうでないと情報は相手に届きません。
振り向くか、興味を持つかをどうやったら判断できるでしょう?答えはシンプルです。
判断するためには送り手であるあなたが受け手の気持ちになって考えてみれば良いのです。あんなひともいる、こんなひともいると細かくペルソナを設定し過ぎないで「受け手」という大きな枠で考えてみましょう。大勢の不特定多数もみんな「受け手」という存在にすぎません。あなたという送り手を知らないし、まだ情報に興味を持っていない「受け手」なのです。
だから、もしもじぶんが受け手ならこの言葉に振り向くだろうか?この情報に興味を示すだろうかと考えてみれば良いのです。受け手としてのあなたの答えがNOだったら、ひとは振り向かない、ひとに届かないということです。
だってあなたは普段、思わず振り向いたり、興味を感じたりすることで、他人の情報や広告を判断しているわけでしょ?
あなたは優秀な受け手なのです。そのあなたにNGな情報なら、受け手から送り手に戻ってどんな言葉なら振り向いてくれるだろうと一生懸命考え直しましょう。そして、また受け手の気持ちになって、考え直した言葉を判断してみたら良いのです。「振り向いてくれるかなあ」「興味を持ってくれるかなあ」と、送り手の側に立ったまま判断するから相手の気持ちが見えないのです。それは相手の気持ちではなく、主観(じぶん)の判断です。
それに引き換え、「こんなのに振り向かないよ」「こんなの興味を持てるわけないじゃん」と、受け手の気持ちで判断するのは客観(第三者)による判断です。つまり、客観的にチェックできているのです。第三者(他人)になって客観判断してみることが習慣になると、相手の気持ちが見えるようになります。その結果、インフォメーションではなくコミュニケーションができるようになっていきます。まずは、送り手と受け手の間を行ったり来たりしながら、送り手の気持ちで書き、受け手の気持ちで評価してみることです。

さあ、ここからはじめてみませんか。
第1回目は「インフォメーションとコミュニケーション」の対比から、コミュニケーションを考えてみました。次回は「広告とはコミュニケーションそのものだ」ということ視点からコミュニケーションを語ります。ぜひ、次回もお読みください。