お世話になっているクリエイターのご紹介

ヴィジュアル計画 mare
牧野 博泰氏

感性を大切にするタイポグラファー「貼箱」を語る

公開日:2009年4月5日(日)11:59

村上紙器工業所のロゴ、名刺をデザインしていただいた「ヴィジュアル計画 mare」の牧野博泰さんに、ロゴができるまでのプロセスやモノづくり企業との関わりについて、お話を伺いました。

村上紙器工業所ロゴ

村上紙器工業所のロゴができるまで

緊張しながら始まったインタビュー

緊張しながら始まったインタビュー

場所は、牧野氏のオシャレなオフィス

場所は牧野氏のオシャレなオフィス

壁一面の本棚には、様々なジャンルのデザイン本が並ぶ

壁一面の本棚には、様々なジャンルのデザイン本が並ぶ

「貼箱製作ワークショップ」に、参加していただいた時の印象を語る牧野氏

「貼箱製作ワークショップ」に参加していただいた時の印象を語る牧野氏

村上 「村上紙器工業所」のロゴは、どういう思いで創られましたか?

牧野 以前、「貼箱製作ワークショップ」に参加して、貼箱の製作工程を見たり体験してとても新鮮だったし、、面白かったし、村上さんたちの「手の動きのシャープさ」を見て、何となく「村上紙器工業所」のロゴが自然に浮かんできたんです。
村上さんの名刺を見るとロゴもなかったので、村上紙器工業所さんのロゴを創らせて欲しい、依頼してくれないかな?と思ってました(笑)。

村上 ウチも小さい会社なので、「ロゴを創ろう」なんて、夢にも思ってなかったのですが、お願いしてまさか「村上紙器工業所」があんなカッコいいロゴになるとは思ってもいませんでした。

企業によっても新しい会社、古い会社、我々のようなモノづくりからIT企業までいろいろな企業がありますね。その中で、古くからやっている「伝統」を表すとは、どんな風にイメージするのですか?

牧野 村上さんの場合、5〜6案程を提案させていただいたのですが、村上さんは伝統を持ちながらいろんな方とお付き合いされ、アピールの仕方や表現の仕方がとても上手で…村上さんが気に入るであろうと思うものを「これが、イイ!」と言われたんです(笑)。

村上 牧野さんは「筆文字」がとてもお得意で、あのイメージが強かったです。
でも、伝統とか貼箱の製造作業のシャープさを直線を用いたロゴにしたとお聞きして、自分ではわからないことが他から見るとそんな風に見えるというのが面白かったです。

牧野 今回提案をさせていただいた中で、村上さんのイメージする「会社の現状とこれからの思い」が、奥さんや弟さんがイメージする「現状と思い」の見せ方というかイメージが違うんだなと思いました。

採用になったロゴは、安定性を持たせて少し平体を掛けて、縦と横の棒に強弱をつけて、「伝統色」が出るようになっていて、それを弟さんたちが選ばれた。
でも村上さんは、「新しいカッコ良さ」「斬新さ」を選ばれたので、それぞれの「思い」が違うんだなと感じました。

今回は伝統的なイメージのロゴになったけれど、僕が最初に浮かんだのは斬新なイメージのものだったので、これをもう一回創らせてもらえないかな?と、頭の中では消したくないと思っていました。

タイポグラフィーについて

「村上紙器工業所」の初代名刺、カッコイイ「貼箱」のタイポグラフィー
「村上紙器工業所」初代名刺、カッコイイ「貼箱」のタイポグラフィー

出来上がった名刺。「貼箱」のタイポグラフィーがカッコイイです!

「タイポグラフィー」について、熱く語る牧野氏。

「タイポグラフィー」について、熱く語る牧野氏。

牧野さんによる筆文字
牧野さんによる筆文字

牧野氏の得意な「筆文字」の数々。

真剣に話を聞くインタビュアー

村上 会社のロゴを創っていただき、折角なので「名刺」のデザインもお願いすることにしました。

牧野 「名刺も!」って言っていただいたので、「“もう一回チャンスがある!”と“貼箱”の文字も創っていいですか?」とお聞きしたところ、「いいですよ!」の返事で「貼箱」をキービジュアルというかイメージビジュアルとして使わせてもらいました。

村上 出来たものを同業者の仲間に見せると、いつも見ているはずの「貼箱」という文字が、「こんな風になるの?!」と驚いていました(笑)。

「タイポグラフィー」って、とっても面白いな?と思うのですが、タイポグラフィーとは「文字」をビジュアル化、図案化するということなのですか?

牧野 そうですね。
図案であり、イメージですね。
もう十年以上前、大御所のデザイナーの方が「文字の一部を削ったり、省略するのはおかしい!」と言われていた時代がありました。
でも日本人って、「面白かったら、何でもありやん!」みたいな面白さってあると思うんです。

昔と違って、今は会社のロゴであっても、文字の一部が無くなっても極端にいうと「読めれば、イイやん!!」という、文字をビジュアルとして楽しいでしまう「見識の広さ」があり、古い考え方もようやく時代に追いついてきたかなと思います。

だから「貼箱」の文字も、ワークショップを体験させていただいた時に、もっともっと遊んで「貼箱のカッコ良さ」を表現するべきやと感じました。

村上 そういう意味では、「貼箱」というのが何か“別の星”からやって来たみたいと感じました(笑)。
例えば、「貼箱」の“貝”や“目”の中の“一(横棒)”が、「はこ」のようにシンボライズされたイメージがとってもお洒落で、これが名刺に入っているだけで、凄くカッコいいなと思います。

牧野 その「カッコイイ!」とか「素敵!」というのが、僕が最初に貼箱を見た時の感覚だと思います。
もちろん最初は、貼箱や村上さんのこともよくわからなかったのですが、村上さんの説明を聞いて、身(箱本体)に蓋をかぶせる時のフィット感とか、それを調整するためにゼロ・コンマ何ミリを修正するために何回も作り直すとか、この辺のこだわりってスゴイナ?と思いました。
それが、村上さんの言われた「ロゴがカッコイイ!」というのと、リンクする部分だと思いますね。

村上 それって、僕たちは毎日やっている普通のことなんですが、感性の高いデザイナーの方に感じてもらって、それを具現化というかイメージ(形)にしてもらえたのは凄く良かったです。

牧野 ロゴって、ある程度は“意味付け”というか、例えば平体を掛けて縦棒と横棒の強弱をつけながら「伝統を感じさせる」とかは必要なんですが、それを越えた部分はやはり「感性」なんです。

「感性」に意味を求めようとすると、どうしても縛られてしまうので、正にこのロゴは「感性」だけで先に浮かんだものかもしれません。

村上 でもそれが、いつも見ている「貼箱」とは違う、「素晴らしさ」を出してもらえたのでしょう。
昨年末にこの名刺を創ってもらったのですが(オリジナルの紙、印刷は、ハグルマ封筒株式会社さん)、それ以来名刺交換をする度に、相手の反応が今までと全然違うんです(笑)。

独特の紙の色、風合いやシルバー印刷の良さもあって、「すごくカッコイイですね?!」とよく言われますし、デザインのわかる方だったらこの名刺を見ただけで、「この会社はデザインをわかっているし、すごく気をつかってデザインを扱っていることがわかります。」と、何回も言われました。
創っていただいて、ホントに良かったと思います。

デザイナーとモノづくり企業の関わりについて

村上 話は変わりますが、デザイナーから見て、デザイナーと我々モノづくり企業の関わりについて、どう思われていますか?

牧野 最近、特に「セット・コミュニケーション」や「関西ブランディングデザイン協会」の方々とコラボレーションさせていただいて、デザイナー(クリエーター)同士の話は、イメージは凄く伝わるし、まとまるのですが、それが形になった時微妙なズレがあって、それを村上さんや和紙商の方などがそのズレを修正していただけることは、凄く勉強になっています。

デザイナーは、最近コンピューターを使ってデザインすることが圧倒的に多くなったので、試作品を作ってそれで終わりだったものが、「これを量産するなら、どうなるの?」という時、わかっているつもりだったけれど“アバウト”だったことを気付かせてもらえたととても感じています。

村上 その意味では、デザイナーとモノづくりというのは全く立場が逆で、我々が作っているのは「作品」ではなく「製品」なので、お客様からは「安く」「早く」とか「量が出来るか」など、常に“効率”を求められています。

普段、クリエイティブ(創造性)は我々の枠の外のことなので、デザイナーの方々とのコラボレーションは、とても刺激をもらっています。

牧野 僕も村上さんたちから、いっぱい刺激をもらっています。
例えば、自分の作った“作品”を“商品”にするのに、村上さんの貼箱が商品のクオリティーを上げてくれる。

実際それで終わりではなくて、お金にしないといけないので、じゃ?最低ロットはどれくらいでどんな紙質を使って、どんな風に…と詳細を詰めていくと、実はわかっているようでわかっていなかったり、知っているつもりで見逃していることがたくさんあります。
それらを改めて学びながら、村上さんに「これからやっていくと、どうなりますか?」をぶつけると、村上さんからリアルな答えが返って来ます。
デザイナーも、受注産業みたいなものですが、今回自分の“作品”から“商品”にするプロセスを踏む中で、村上さんたちから学んだことは実に多いと思います。

インタビューが終わって、緊張が解けた二人!

インタビューが終わって、緊張が解けた二人!

最後は、笑顔で記念撮影です。

最後は、笑顔で記念撮影です。

村上 その辺では、お互いにないものを持っているので、それを感じ取るというか、受け入れることが大切ですね。
逆にそれがなかったら、「あいつは、あんなこと考えてるけど、こっちの立場をわかってない!」(笑)とか思い出すとお互いに損なので、その意味でいいコラボレーション、いい関係を築かせていただいています。

今までなら、仕事では直接デザイナーさんと接する機会がありませんでした。
あったとしても、間に何人もの人が入っていて、意思疎通、コミュニケーションを取ることが難しかったです。

最近は、直接一緒にさせてもらって、お互いに受け入れることによって、凄くいいモノづくり、クリエイティブ…が出来ることは、とても嬉しく思います。

これからも切磋琢磨して、お互いを高めていきたいと思います。
今日はどうも、有り難うございました。

牧野 有り難うございました!

※写真をクリックで拡大、矢印キー( ◀ ▶ )で写真がスライドします。

写真撮影:渡邉 浩行(W’s works.)、村上 誠(村上紙器工業所)
インタビュー:村上 誠(「ヴィジュアル計画 mare」にて)

インタビューの音声は、こちらからお聴きになれます。(19分46秒)

(Windowsマシンで音声が聴けない時は、アップル – QuickTime – ダウンロードから「無償プレーヤー」をダウンロードしてください。)

牧野氏作品例

ヴィジュアル計画 mare

住所 大阪市北区山崎町1-13
IBビル4F
TEL 06-6363-0864
FAX 06-6363-6755
URL http://www.visual-mare.com/
代表者 牧野 博泰
事業概要

パッケージ、ポスター、カタログ等のグラフィックデザイン全般に加え、ロゴ・マーク、カリグラフ、イラスト(平面・立体)制作に力を入れています。
企業・店舗・ブランドロゴマークや、書籍雑誌等タイトルロゴ、イラストによるヴィジュアルなどを、幅広く手がけています。

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