「壁掛け」貼箱
公開日:2009年05月29日(金)
「貼箱」の概念を越えて・・・というか、我々(箱屋)では考えもつかない「貼箱」を越えた「貼箱」になりました。
もはやこれは、「貼箱」ではありません!?
製造業の発想では、これが生まれることはなかったと思います・・・。
デザイナーさんの ”想い ”が、このインテリア・デザインとしての「貼箱」を創らせたのでしょう。
”包装資材 ”としての「貼箱」という視点だけではなく、”「貼箱」が使われるシーン ”を考えてみましょう・・・が、発想の原点です。
そこで、”インテリア ”として「貼箱」を見るとどうなるか?
まるで、壁に掛かる ”オブジェ ”のようでもあり、どう見ても ”パッケージ ”には見えません。
「和」の空間にも、「洋」の空間にも溶け込んでいくこの雰囲気・・・。
” 和モダン ”としての、全く新しい感覚の貼箱です。
それもそのはず、デザインそのものは「洋」的なスタイルですが、使われているのは和紙。それも一般的な紙ではありません。
これは、越前和紙(福井県)の中でも特別な「もみ紙」で、紙自身は機械化による量産品ではない「手漉き」和紙です。
でも
しかし、ここからがこの「もみ紙」の素晴らしいところで、普通は「もみ紙」といっても機械でこの「しぼり(もみ)」を付けますが、これは職人さんの手で一枚一枚揉むことでこのしぼった風合いを出しています。
これは、一般流通品では通常考えられない加工方法です。
正に、和紙職人による「匠の技」でしょうか。
そんな素晴らしい素材を「形にしたい」という想いが、我々「貼箱職人」にもあります。
これは、そんなデザイナーと貼箱職人が創造した作品です。
箱全体の厚みは20mm以下で、本体の箱の深さ(内寸)は12mmしかありません。
そしてその中のカードなどを置くための「棚」は、何と幅8.5mmです。
これは、通常の貼箱としては考えられない大きさ(薄さ)であり、紙を貼る時の「折り込み」も、幅8.5mmでは人の指さえ入らないのです。
そのため、この「棚」の制作には金属製の「ヘラ」を使って「折り込み」をしました。
手で「折り込み」をする場合。箱の ”内側 ”に向かって折り込んでいくため、当然“手が入るスペース”が必要です。
しかも、この「もみ紙」は、人の手でしっかりと揉まれているため、普通の「もみ」に比べて紙の凹凸が非常に深いため、のり付機を通しても紙に糊(ニカワを使用)が乗りません。
つまり、通常は紙の裏面にはほぼフラットに糊(ニカワを使用)が塗布されるのですが、あまりの凹凸のために、殆ど糊が着いていない状態で「折り込み」をしなければなりません。
殆ど糊が着いていないために、ニカワの乾燥も早く、折り込みの接着がとても困難で、おまけに「手」ではなく、「ヘラ」で幅8.5mmの隙間に折り込みをしなければなりませんでした。
もちろんこんな経験は初めてですが、作っている時は必死で、何が何でも作らなければという想いで仕上げていきました。
今となっては、「素晴らしい経験」となりましたが、流石に簡単にはできないですね。
また、表紙の開閉では、箱本体と表紙を留めるのに最初マジックテープを使おうと考えましたが、いざやってみるとマジックテープを剥がす時に、テープ自身が絡み合う力の方が強く、もみ紙の方がももけて(やぶけて)テープが剥がされてしまいました。
この「もみ紙」の特性のためどうしようもなく、急遽「磁石」を埋め込むことにしました。
工場に、幅6mmほどの磁石があったため、それを埋め込むことにしましたが、箱や表紙部分が極端に狭いため、カッターナイフで一個でつ精密に磁石を埋める穴を切っていきました。
これだけでも、かなりの作業となりました。
しかし、出来上がってみると、何とも愛おしい「貼箱」です。
こんな ” 苦労 ”と ” 喜び ”を与えていただき、感謝致します!!
人の手による「もみ紙」の質感と、「黒」と「朱」のコントラストは、何とも言えない色彩です。
<撮影メイキング>
撮影は、いつもお世話になっているデザイナーさんの事務所で行なわれました。
グラフィック・デザインをされている方ですが、「和の空間」がお好きでこの壁の反対側は畳と障子が置かれています。
お客様との打ち合わせなども、この「和ー空間」で行なうと、自然とリラックスして話が進むそうです。
そんな「ひと味」違った空間での<撮影メイキング>を、お楽しみください。
フォトディレクションは、この「インテリア貼箱」をデザインしたランデザインの浪本さん。
女性スタッフの皆さんも、一緒にお手伝いしていただいています。
貼箱の中の「カード」の色の組み合わせ一つで、「映像」としてまた違った印象になって来ます。
彼女たちの ”センス ”が、より一層「貼箱」を引きたててくれることは、言うまでもありません。
こういう時の「女性の感性」は、とっても重要ですね…。
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