◎村上紙器工業所
「お客さま訪問記」シリーズ
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もとは企業やお店のロゴ・名刺・フライヤーなどのデザインをしていたという藤田さん。そのうちにスマートフォンケースのデザインやタトゥーの下書きなど、だんだんとイラストメインの仕事が多くなり、イラストレーターという方向へ傾いていった。そしてソフビ人形(ソフトビニール人形)にどんどんハマることになり、ついには販売することに至ったとか。
ソフビ人形を販売することになった藤田さんがいかにして村上紙器にたどり着いたのか?そして、村上紙器の印象はどうだったのか?
(村上)藤田さん、本日はわざわざ弊社までお越しいただいてありがとうございます。藤田さんが手掛けられているソフビ人形に対してパッケージが果たす役割、弊社の貼り箱への期待感、弊社との出会いからいままでのことなど、飾りのない言葉でいろいろとお聞かせください。では、よろしくお願い致します。
じぶんがつくりたいものをつくりたかった。
(藤田)いきなりソフビ人形をやりはじめたのではなくて、最初は企業やお店のロゴや名刺、フライヤーなどをデザインしていました。ところが、そのうちに絵を描くようになったんです。その絵を使ってスマートフォンケースをデザインしたり、タトゥーの下絵を描くようになりました。
でもそのころすでに、ひとに頼まれてやるのが嫌だったんです。じぶんがつくりたいものをつくりたいと思っていました。
どんどんとソフビ人形にはまっていった。
(藤田)そんなタイミングでソフビと出会いました。出会いはアクセサリー職人をしていた友人の影響です。友⼈はアクセサリーの原型をつくっていたこともあり、元々好きだったソフビへの造形に強く関心を持っていました。そこで、絵やデザインが得意な僕と、造形が得意な友人で何か面白いことが出来ないかと、ソフビの制作をはじめたんですけど、どんどん僕⾃⾝が深みにはまっていったんです。(笑)⼈形の下絵を描いたり、キャラクターのデザインを考えるのがとても楽しくなっていきました。
(藤田)当初、僕がデザインを担当して、造形は友⼈に任せようと思っていましたが、じぶんで造形してみたくなったこともあり、3Dのモデリングソフトを使ってつくってみようと勉強をはじめました。
じぶんでどんどん妄想を膨らませていった。
(藤田)雑誌で⾒たソフビの世界観がとても⾯⽩かったので、余計にソフビにハマっていきました。オリジナルな怪獣や怪⼈を設定した、独⾃のストーリーと世界観が魅⼒的でした。近年クリエイターズソフビの作家が増える中で、もしもじぶんでつくるとしたら、どんな世界観がいいだろうと、キャラクターやコンセプトを考えることに夢中になっていき、キャラクターの設定はできるだけ細かくやっていきました。ソフビ好きにはもちろん、ソフビに興味のない方にも知っていただくためにはどういった形でどういったターゲットに向けて、発信すればいいだろうかと妄想が広がっていきました。
“Kaibutsu Shoji(怪物商事)”という架空の世界。
つくり出した(妄想した?)のはブランド名にもなっている
(藤田)Kaibutsu Shoji(怪物商事)という架空の会社から広がる世界です。表向きはいち民間企業。その裏で、怪⼈、怪獣、怪物を ⺠間⼈と取り引きし派遣する、悪の秘密結社という子供にも伝わるような 設定です。実際にソフビを購入いただくお客様を、その「民間人」と見立て、お客様自身にも怪物商事の世界の登場人物になっていただく、2.5次元の世界を考えています。
(藤田)商品化して仕事にしていくことは最初から考えていました。ヘッダー付きのビニール袋のような簡易な袋に⼊れたスタンダードなものも販売しますが、それとは別にプレミアムBOX に入った特別な製品も届けたいと思いました。それは⾼級感があって、さらに箱を開けるときのワクワク感を感じてもらえるようなスペシャルな箱です。
デビューさせるにあたり「箱」が欲しくなって、つくってくれるところはないかと、「箱」「貼り箱」「フィギアパッケージ」と、いろいろなキーワードで検索しました。
(村上)やっと、箱の話になってきましたね。(笑)
netで検索した村上さんのインタビュー記事が、僕に刺さってしまいました。
(藤田)netで検索するとたくさんの箱の会社が出てきました。僕の願いは長く深く付き合えるひとと出会うことでした。村上さんのHPを見ていくとインタビュー記事がたくさん出てきますよね。いままで村上さんが箱の制作に携わった人々との関係やプロセスが細部までわかり、僕にメチャクチャ刺さりました。
僕の熱意に付き合ってくれる人はいるのか?その疑問は村上さんのHPを見た途端に一瞬で消え去りました。このひとなら僕の熱量が伝わると、直感したのでまず電話でコンタクトをとりました。
実際に会った村上さんはnet以上に熱かった。
(藤田)最初の電話ではうまく説明できませんでした。箱のことを何にも知らないじぶんの無知をさらけ出すのが怖くて、ちゃんとこころが開けなかったんです。それなら実際に会ってお話しした方が良いと思い、工場を見学したい旨を伝えたら、「じゃあ、来てください」と、村上さんが快く受け入れてくださいました。
(田中)うちの箱は高いですよー!と、言われませんでしたか?(笑)
箱の素人の僕に理解できるように、サンプルをつくってくれた。
(藤田)はい!まさにその通りのことを第一声で言われました。HPを拝見してこういう人だろうと想像していたよりも、実際の村上さんの方が熱かったですね。
そのとき、こういうものをつくりたいんですと、紙に書いて持参しました。ソフビが入った箱を引き出す可動式のものをイメージしていたのですが、それだと引き出す部分が構造的に弱いものなので固定式にした方が良いとアドバイスをもらいました。村上さんが示してくれた方法は構造的には違うけど僕のイメージに近いものでした。「それでもできるんだ!」「それは良いなあ」と、その提案を受け入れました。
そのあと、箱のことがまったく素人の僕にわかりやすいように、サンプルをつくってくれました。サンプルをとりに行ったとき、「理想のものができた!」と、感動しました。
(村上)そうでしたね。サンプルをとりに来られたときに、とても喜んでくださいましたので、こちらもやりがいを感じました。
(藤田)最初にお渡しした簡単な図面にはじまり、その間、電話やメールでずいぶんやりとりをしましたものね。本当にできるんだと思いました。
(村上)サンプルをつくるまでは時間をかけて詳細を詰めていくことが大切です。
(藤田)あの箱なら、“特別なものとして届けたいという願いが叶いそうです!⼈形の制作が遅れたことで、たくさん訪問することができたのも良い結果につながったと思います。
まもなくソフビ⼈形が完成しそうです。実際の販売スケジュールが決まればしっかり告知していきたいと思います。 村上さん、引き続きよろしくお願いします!
(村上)期待していますよ!
お金がかかっても良い。
じぶんがやりたいことを伝えて、
とことんやってもらいたい。
(藤田)例えば、キャラククターの違いで箱のデザインを変えていけば、いろんな箱が欲しくなるんじゃないかなあと、夢が広がっています。今後は怪物商事という設定の中で、ソフビ人形以外もつくっていきたいです。この工場に来るたびに村上さんといろんな話ができるのも楽しみのひとつです。もっともっとじぶんのやりたいことを伝えて、村上さんにはとことんやってもらいたいと思っています。今日は、いろんな話を聞いていただき、ありがとうございました。
インタビュー&ライティング(田中有史:田中有史オフィス)
撮影&デザイン(浪本浩一:ランデザイン)
貼り箱撮影(村上誠:村上紙器工業所)
屋号:ambience
氏名:藤田真毅(ふじたなおき)
TOYブランド名:怪物商事
訪問日:2022年12月09日(金)
公開日:2023年06月21日(水)
※掲載内容は取材時の情報に基づいています。
ソフビ人形という、普段接する機会のない世界。しかし、藤田さまの情熱がこのソフビ人形をつくり出し、その思いがこちらにも伝わったので、今回の貼り箱の提案をさせていただきました。商品には、それをつくった人の思いが宿ります。それを収めるパッケージは/貼り箱は、私たちもどういうものがいいのか全力で考え、つくっていく覚悟です。お忙しいところ取材にご協力いただき、ありがとうございました。(村上)
ブログ記事:ブランドの熱量を届けるパッケージ:ソフビ人形