商品コンセプトを形にする化粧箱(貼り箱)、商品イメージを表現
公開日:2019年4月21日(日)|お知らせ
モノの背景やストーリー、作り手の思いを伝えられる箱をつくりたい
貼箱 村上紙器工業所
<大阪のワザ>
—商品のイメージを表現—
プレゼントをもらって箱がきれいだと、期待が高まる。デザイン性の高い「貼箱(はりばこ)」の企画・製造をしているのが村上紙器工業所(大阪市西成区天神ノ森1)だ。箱は単なる包装ではなく、商品の作り手の思いの表現だという。
同工業所は1952年に創業。貼箱というのは、1〜2ミリの厚紙で箱を形づくり、その上から紙を貼ったものだ。
「化粧箱」とも言われ、厚のあるしっかりした箱だ。
代表の村上誠さん(56)に、紙を貼って仕上げる工程を見せてもらった。ブライダル用DVDのケースで、形は本の箱のよう。上から貼る紙は、機械で裏面全体にのりが付けられる。のりは、乾きやすいにかわをつかっている。
機械から送り出される紙に、村上さんの弟義彦さん(53)が厚紙の箱を載せ、各面に押し付けて貼っていく。印を付けていないのに、紙の端がきっちり合っていて、ぴしっと貼られているのに驚く。
紙に切り込みを入れて端の部分を折り込んだり、アイロンをかける人がいて、全て手作業だ。のりにしても紙にしても温度や湿度の影響を受ける。紙の素材、硬さ、厚みでも変わってくるので「その辺りは経験の蓄積でノウハウがある」と村上さん。
仕上がった箱は角や断面がピッとしていて美しい。ブライダル用で白いので「汚せませんね」と聞いた。村上さんは受注の際、素材や色で使っているうちにできる汚れや傷などのリスクまで説明するという。
さて、通常は注文通り箱をつくるだけなのだが村上さんは「ブランディング・デザイン」まで手がける。消費者に企業や製品などブランドを認知してもらうため、情報を可視化して発信することだ。
セミナーで勉強し、デザイナーらとの人脈も広げた。
チョコレート専門店「チョコレート・ブランチ」(豊中市原田中1)から2017年、パッケージをリニューアルする相談があった。村上さんは「チョコは丁寧に作られて美しく、繊細かつ深みのある味の魅力を伝えたい」と考えた。先方から「箱だけでなく店舗に統一イメージが必要だと気づいた」とブランディングの相談も引き受けることになった。
村上さんは、知り合いのデザイナーとともに店舗に行って関係者から店や商品への思いを聞き取り、それを基に「艶ガール」と名付けたキャラクターをあしらった色・サイズ違いの4種類のパッケージを作った。裏にもそれぞれ違う色の紙を貼り、「喜びのお福分け」という言葉を入れてコンセプトを表現。上質感ある箱ができあがった。
箱によって、商品のイメージは変わる。村上さんは「いいもんでもぺこぺこの箱では、そうは見えませんね」とわかりやすい。コンピュータソフトのパッケージを手がけ、3割ほど売り上げが伸びたというケースもあるという。
「商品コンセプトを形にする箱、ものができるまでのストーリーや背景、作り手のことや思いを伝えられる箱をつくりたい」と語る村上さん。
箱は、和紙や革風の紙を貼ったものなど、どれもおしゃれ。「こんな箱でもらったら、絶対捨てられない。家は箱だらけになる」と思ったのだった。
毎日新聞(大阪欄 2019年4月19日(金)掲載記事より)
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