〜コトからヒトへ〜 印刷/紙器業界について

公開日:2013年8月29日(木)|お知らせ

印刷新報という業界紙の隔週連載コラムに、掲載していただきました。
「コトからヒトへ」というテーマで、PEN PLANNING CO.代表の青柳秀男氏とCMYK48(印刷や紙加工の有志の集まり)メンバーの中から2人との鼎談形式で、人を掘り下げていこうという企画です。

第一回は、篠原紙工株式会社代表取締役の篠原慶丞氏と私で鼎談させていただきました。
話が盛り上がり、3回構成でお届けいたします。

青柳:まずは、篠原さん!まさかの安部総理との握手・対面・言会話いかがでしたか?

篠原:僕は印刷産業の魅力と必要性をたくさんの人に知って欲しいと思って、ずっと活動しております。
その対象は、はじめの頃は印刷会社の方、次はデザイナーさんや学生さん、そして最近は異業種の方や子供達です。 そんな活動の中に、たまたま政治家の方がいた、というのが本当のところです。 それ以外の思惑は今の所はありません。 私は「今」というのが大切だと思ってて何をするにも先の事を考えると身動きが取れなくなってしますからです。 将来は考えるものではなく、夢をみるためにあると思ってます。 今の場所から進んだ時、その場所にきて初めて見える事があるんです。 話がそれましたが安部首相に直接、印刷産業の魅力を話すことが出来たのは今までの自分の進むべき道が間違って無いんだという自信になりました。 あと、純粋に自分の国の総理大臣と名刺交換して、講釈した時は何とも言えない誇らしい気持ちでしたね(笑)。

青柳:最初からハイレベルなコメントありがとうございます。素晴らしい経験ですね。村上さんはNHKに勤めていた経験から紐解くと有名人のエピソードあるのではないですか?

村上:NHK時代は完全に技術系の裏方でしたから、有名人とのエピソードというのはないですね。 あえていえば、当時(約30年前)同期が「ニュースセンター9時(キャスター:木村太郎、宮崎緑)」のカメラをやっていてスタジオ見学させてくれた時に、当時中高年の夜のアイドルと呼ばれた宮崎緑さんのキャスター席に座ったとか(笑)。局の食堂で、斜め前で田中裕子さん(おしんのメインキャスト)もご飯食べてたとか・・・くらいです(笑)。
実は7月3日に無印良品のアートディレクションをされている原研哉さんが、東京から講演に来られてたので聞きに行ってました。 世界的なグローバル競争の中、日本は「価値を生み出していく“文化”を創らなければならない!」と話されていました。
単純なものづくりは、労働コストの安い海外に流出。人口減少、高齢化の日本では、どうやって「価値」のあるものを生み出すか、そしてどんな人に買ってもらうか。 原さんも言われてましたが、キーワードは「大人」。 代官山「蔦屋」に代表されるような、大人がちゃんとお金を払って買ってくれるような「商品」、そして「店づくり」をしていかないと・・・。まさに、その通りだと思います。そのためには、「人」がどう感じるか? は、重要なことかもしれません。

青柳:やはり、文化は人がどう感じるかにですね。お二人ともモノづくりですが、篠原さんはどちらかといえば量産の中で新しい“意味”を表現していく方向(?)、村上さんは、手作り家内工業の中で新しい“意味”を表現していく方向(?)・・・と捉えてみると、それぞれの経営理念というかこだわりがあると思いますが、最近の仕事の成果物を例に、「こだわり」を教えてください。
はじめはどうなることかと心配していましたが、まったくの杞憂に。ハイレベルなSNSバーチャルでの鼎談、以後もお楽しみください(続く)。

その「2回目」の記事です。

村上:一例ですが、知人のグラフィック・デザイナーからの依頼で作った「ステーキナイフ」の貼箱です。そのデザイナーさんの同級生が福井県越前の刃物メーカーさんで、そこからのご依頼で、ロゴ・パッケージの制作をされることになり、「このナイフにふさわしいパッケージを!」とのことで、ご注文をいただきました。
軽井沢にあるホテルの料理長が日本代表として今年1月、フランスで開催された国際料理コンクール、「ボキューズ・ドール国際料理コンクール」に出場されました。
出場の際、食器や刃物も日本製にこだわりたいと同メーカーに依頼し、このステーキナイフができ上がったんだそうです。
結果、日本人として史上初の三位入賞。魚料理部門で最高得点という快挙に。お皿を傷つけず、やわらかい魚をさっと切れる切れ味に、審査員や関係者にはとても評判だったそうです。

このナイフの貼箱としては、「越前」の刃物メーカーさんということで地元の素材を使うのがいいのではと、貼箱に「越前和紙」をご提案させていただきました。
言ってみれば「地産地消(地域生産地域消費)」ではないですが、パッケージも地元越前の和紙を使うことで地域性も演出できますし、商品(ナイフ)とパッケージの親和性があることで、一体化したストーリー(物語り)が生まれます。これも、商品の魅力の一つだと考えました。

中に繊維を漉きこんだ越前和紙でフタを包み、ミ(下箱)はビオトープGA(ベリーレッド)を使って赤と黒でコントラストを演出。ナイフのシルバーと相まって、色と質感が絶妙のバランスになっています。
ナイフもパッケージも正に「Made in Japan」として、世界へ旅立ちました。その後、実際に数量限定で商品化もされ、この国際料理コンクールでの評価されたこともあり、メーカーさんにはニューヨークやフランスからも引き合いが来たそうです。

単なる「入れ物」としてのパッケージにとどまらず、我々の創る貼箱を通して、企業の「ブランドを創る」お手伝いをしていると考えています。
http://www.hakoya.biz/item/bottle/item_747.html

篠原:最近、私はモノ作りというフレーズに違和感を感じています。 私の仕事は確かにモノを作っていますが、モノを作る事が目的ではありません。 弊社で手掛けた製品をてに取った人の心の奥まで届き、心を動かす事を「製本や加工」で少しでも増幅させる事が出来たら良いなと思って仕事をしてます。 つまり「伝える事(想いを伝えたい人から取る側に渡しする事)」が目的なのです。

弊社が扱う製品はチラシやパンフレットなどの印刷加工物です。 これらの印刷加工物の役割は「情報(想い)を伝える」と言う事。 印刷の本質的な目的です。 その目的を効率よく達成するにはどの様な仕様が最適かを考えた結果、凝った仕様を採用したり、独創的な技術が生まれてきたわけです。。 例えば2009年に印刷機械メーカーのハイデルベルグジャパンから展示会の招待用DMの制作で相談がありました。 ひとつのイベントを2つの会場で行うため、それを上手く融合した形でお客様に分かりやすくお伝えできる案内状を作りたい、という相談内容でした。 考えた結果、2つの会場を表すため、本文を左右に独立させ、それぞれが上下左右に展開出来る様な形状の頁を設けました。その独立した頁は双方を展開すると左右が独立してますが、折りたたむとそれぞれが絡み合います。 第1会場と第2会場の展示物が異なり、展示物が異なる事を左右頁を独立させる事で表現しながら一つの展示会という枠組みの中でそれぞれがリンクし合っている事を折りたたんだときの重なり合いで表現しました。

この冊子の仕様を提案し、採用され、できあがったときに初めて「自分がやりたい事はこの様なことだった」と気がつきました。 それまで弊社がしている「製本」はデザインや印刷物をのせる,無機質なお皿でしか無かったのですが、その時初めて料理の味を引き立たせる意味のある美しいお皿になったのです。 デザインや印刷の本質である「伝える」事を製本でも一役買ったのです。 この時から「伝える」為に製本で何が出来るかを真剣に考えるようになりました。
http://www.s-shiko.co.jp/casestudy/jgas2009/

お二人の熱い話はまだまだ続きます(笑)。

その「3回目」最終回の記事です。

青柳:篠原さん、村上さんとの鼎談は今回で最後になりました。

篠原:村上さんの話を伺って、私が考える製本への考え方と共通点が多いなと(笑)。 村上さんも高い技術をつかって高品質な貼り箱を作っていますが、箱を作る事が目的ではなく「ブランドを創る」という「効果」を考えているように感じます。

村上:確かに“貼箱”という「モノ」を作ってお客様へ納めるのですが、本当はお客様も気づいていない「ブランドを創る」という“コト”を提供しているんですね。最近マスコミなどでも、やたらと「モノづくり」という言葉を使います。「モノづくりの復活」とか、「日本のモノづくり」とか。製造業が弱くなったかという表れでもあると思います。我々は今「モノ」を作っていても難しい時代、「目に見えるもの」だけを提供していてはダメなのです。印刷でも製本でも貼箱でも、「想いを伝える!」という“価値”を創造していくことですね。

篠原:モノづくりという言葉の響きに懐古主義的な臭いを感じてしまいます。 昔の良かった時代はその時の人達が確立した産業のスタイルです。 今の時代に則した産業のスタイルは我々が確立する必要があります。 モノすくりとは一線を画した言葉を探してます。

村上:モノづくり」とは一線を画した言い方・・・いいですね。 モノづくりは、高度経済成長の時代を象徴する言葉かもしれません。製造業も今は「価値創造」をしていかないといけない時代です!

青柳:ところで、たまたま両社とも新卒から「問い合わせ」を受け人を採用した例がありましたね。SNSだけではありませんが情報発信しているからこその出来事。情報の発信の大切さについてはいかがでしょうか。

篠原:情報発信をする理由はいくつかあります。 1つ目は外部発信 。 一般的に情報発信という言葉を使ったときに皆さんが想像することです。2つ目は内部発信 。外部へ発信している情報と会社内の実情が異なることがありますが、実際には多少背伸びした情報を発信する必要性もあります。ただし、続けて行くと実情とかけ離れてしまうので、外部へ発信している情報は常に内部に向けても発信するのです。3つ目は自己への発信。こちらは個人、つまり自分に課すハードルみたいな意味合いです。 少し背伸びしたけど、周りに言ってしまったからやらねばならぬ、というように自分を追い込む事で自然に周りが見えてきます。また、言葉で発信する事で自分の頭のなかも整理されてきますよね。私も今まさにこの文章を書きながら「情報発信」についての自分の認識が整理できました(笑)。

村上:私は出来る限り、自分や事業のことはオープンにした方が良いと思っています。もちろんすべてをオープンにする訳ではありませんが、いいことも悪いことも可能な限りオープンにすることで、それが見るひとの共感に繋がるのではないかと・・・。篠原さんの言われるように、ちょっと背伸びをすることも重要かなと思います。 自分で言ったからにはある種の責任も生まれますし、後には引けない緊張感をつくって自分を追い込まないと、どうしても自分の気弱な面が出てしまいます。また篠原さんも言われている「書くこと」で、自分自身の気付きにもなるというのはいいですね。思わぬ展開になった例が、日経デザインや日経電子版の記事に結びついた「iPhone貼箱・分解」です。これは当初、記事になるという意識は全くなく、単にiPhoneの貼箱を自分で分解したら、あまりのスゴさにfacebook上に書いところ、たまたま日経デザインの記者さんの目に留まり このような展開になったというものです。 自分でも、SNSのすごさに驚きました(笑)。

青柳:お2人とも、有り難うございました。

日経電子版の掲載記事(内容は、日経デザインと同じです。)
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ブルガリ並の配慮 iPhone「箱」に革命(上)
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFK2802R_Y3A320C1000000/?dg=1

異例の1個600円 iPhone「箱」に革命(下)
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFK17043_X10C13A4000000/

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