HIROSHI NONAMI PORTFOLIO 1989-2007
野波 浩さま(スタジオ ノア/写真家)
『HIROSHI NONAMI PORTFOLIO 1989-2007』のボックス見本を村上さんから手渡される時、ひと目でそれが私の求めていたものであると確信できた。手に取ってみれば、その質感、堅牢感、仕上がりの丁寧さ、全てが納得のいく手触りだった。
モチーフの命を一瞬にして写し撮るというフォトグラファーの宿業として、私は理屈や検証を好まない。ひと目見た印象だけが私の全てであり、それが命そのものだと思っている。この私の気負った思いもそらすことなく、村上さんの作る貼箱は、見事なまでにクオリティそのもので応えてくれた。
ボックス見本を携え、にこやかな笑顔で私のスタジオに訪れてくれた村上さんの柔和な瞳にも、貼箱職人としての気概がひそんでいたように感じられる。
言い訳のない仕事でクオリティを伝え合う、とても心地よい理想的なコラボレーションに成功したと思っている。
次に、また自分の作品を集大成する機会に恵まれたなら、今度はどのような技術とアイデアで挑んで頂けるのか、今から楽しみにしています。
< 野 波 浩 >
江角マキコ写真集「E-MODE」から5年ぶりに新作写真集「Mousa」を発表し、その作品の数々はCG、コンピュータ処理ではなくすべて手作業であり、圧倒的で独特な世界観を放っている。
ナイトメア、陰陽座、劇団☆新感線、宝塚歌劇団など音楽、舞台など多数の宣伝写真を手掛け活動中。
フォトグラファー野波浩氏については、こちらをご覧ください。
ClippinJam CREATOR FILE
「ストーリー性なんて、考えてない。理屈より感じることが大切やから。」
田中 克幸さま(ケイプラント/アートディレクター)
恵美須から住吉大社へと向かう阪堺線の路面電車が走り抜ける大阪市西成区に、天神ノ森がある。線路脇にこんもりと杜の繁った天神ノ森天満宮からほど近く、のんびりした下町を縫うように歩くと、村上紙器工業所に辿り着いた。
ご家族で営む典型的な家内制手工業の小さな工場には、化粧紙と芯紙を圧着する膠の柔らかい香りが充満し、所狭しと様々な機械が並んでいる。代表の村上誠さんは、その工場を1階から2階へと丁寧に案内してくださって、貼箱魂の伝導に余念がない。私は、へぇ〜とか、ほぉ〜とか感心しながら、「ミ〜」やら「インロー〜」などの専門用語に聞き入った。
『HIROSHI NONAMI PORTFOLIO 1989-2007』のために、私は何としても良い箱を作ってくれるアテを見つけなければならなかった。おおよその形と機能は決まっていたが、それを作る職能に出会えないまま、ふと1年以上も前に扇町インキュベーションプラザで交わした名刺を思い出した。
おお、ともあれ天神ノ森へ突撃!
いきなりの電話にもかかわらず、村上さんは快く私の訪問を迎え入れてくださり、その場で箱の構造にも具体的なご提案をしていただいた。あとは用紙や強度や見積やらで打ち合わせは進み、上がったサンプルは120点の超満点、一件落着を迎えることができた。
白雪姫は猟師に連れられ森に迷い込んで七人の小人に助けられたが、私は天神ノ森へ突撃して村上一家に助けられたわけです。
これからもよろしくお願い申し上げます。